もしも学園生活だったら





パラレルワールドという言葉をご存知だろうか。

複数の平行線が存在する世界。

これはとあるパラレルワールドでのお話である。


『〜〜〜〜〜っという事がありまして、本年度から殆どの大学の受験方式が変わりました。
これは三年生の皆さんは勿論、今年入学された新入生も含め重大n・・』


校長がさっきから何か喋っているが俺を含めて殆どの人達は耳を傾けていない。
目を開けながら眠っている者、ひそひそ声で雑談する者、少数ながらも真面目に聞いている者。
新入生にこんな話をして聞く奴はどのくらいいるのか。

ルイ
「ちゃんと聞いておかないと受験生になった時困るよ?」
キュピル
「・・・もしかしたら俺達が受験生になった時また受験方式が変わっているかもしれないだろ。」
ルイ
「そうかもしれないけど、すぐに変わるってことはないんじゃないかな?」

『・・・人が話しをしているときはちゃんとこっち見て真面目に聞く!社会のルールをわきまえていない者は
すぐさま世の中から叩きださr・・・』

キュピル
「(うわぁ・・説教コースに入っちまった・・・。)」

何故か自慢気な表情をこちらに向けるルイ。
これはルイも含めて叱られてると思うのだが・・・。



・・・。

・・・・・・・・。


平成...年。中学を卒業し目標だった高校への入学を果たした。受験はかなり際どかったが合格したのは恐らく奇跡だ。
試験前日に鉛筆を神社で清めたお陰か。

ルイ
「話し変わるけど、キュピル君よくここの高校に入学出来たね。キュピル君の成績を考えるとかなり厳しかった気がするんだけど・・・。」
キュピル
「俺の偉大なる潜在パワーが目覚め(ry」

ルイ
「はいはい・・・。どうせ何故かよく当たる鉛筆転がしでしょ。」
キュピル
「む・・・。・・・運も実力のうちだ!!」
ルイ
「退学しないように気をつけてね。幸運は二度も続かないわよ。」
キュピル
「ぐぬぬ・・・。」

中学・・・いや、小学校。・・・・違う、幼稚園の頃からの知り合いであるルイ。一言で言えば幼馴染に値するのだが・・。
奴は古典的なガリ勉タイプだ。親からきっと高等教育でも受けさせているのかバイオリンは弾けるし家事だって全てこなせるし一流大学への入学もきっと行けるだろう。

一方、俺も古典的な運動だけ出来るタイプって奴だ。体育だけは評価5を貰い続けている。美術的才能は皆無みたいだが美学何か人生の何処で使う!1でも問題ない!

ルイ
「美学ってファッションにも影響したりすると思うんだけどね。」
キュピル
「だったら俺の美学の成績は5だと思うんだが。」
ルイ
「それ真面目に言ってる?」
キュピル
「糞真面目。」
ルイ
「はいはい・・・。高校で離れ離れになると思っていたけど腐れ縁はまだまだ続くみたいね・・・。」
キュピル
「とか言って。本当は一緒の高校に入れて万歳したく思っt・・・」
ルイ
「滅!」

一言良い忘れた事がある。奴はガリ勉タイプだが運動も出来る口も八丁手も八丁タイプだ。
奴の殴りだけは避けろ。

キュピル
「こうなりたく・・・なけ・・・れば・・・な。」
新入生
「(あいつ何でもうボロボロの制服なんだ・・・?)」



・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



キュピル
「へへへっ、今期の期末試験はもうクリアしたのも同然だな?」

隣の席の子に顔を向ける。勿論その相手はルイ。

ルイ
「ちくるよ?」
キュピル
「おい!それは学生が一番やっちゃいけない事だぞ!」

ルイ
「そっくりそのままその言葉返すわ。」
キュピル
「くそー・・・。」

と、言っておくが別に問題はない。そもそもカンニングとは本人に気付かれずに行う物だ。
つまりばれさえしなければチクられる心配だってない。

・・・しかし相手がルイとなると少し厄介。
俺がカンニングしてくる事は当然分っているだろうからガードもかなり固いだろう。
・・・ならば反対側の奴はどうだ?

顔を右から左へと向けその相手を確認する。

マキシミン
「んがぁぁぁ・・・・んごぉぉお・・・・」
キュピル
「だめだ・・・あれは俺と同じく勉強できないタイプだ・・・。」

ルイ
「なんでカンニング前提になってるのよ・・・。素直に勉強を教えてって頼んだら教えるのに・・・。」
キュピル
「ん?何か言ったか?隣の奴にいびきが五月蠅くて聞こえなかった。」
ルイ
「何でもない。」




・・・・。



・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





入学式を終え、第一週が過ぎた。
授業もいよいよ始まりこれから本当の高校生活が始まるが、この先の高校生活を大きく変える分岐点に今俺はいる。


ヘル
「新入生のチビ共!部活は剣道部に入らないか!!?」
輝月
「ふっ、新入生のヒヨッ子共よ。あのような野蛮な奴が運営する剣道部より私の剣道部の方が良いぞ?」
ヘル
「てめぇっ!ここは俺の縄張りだ!お前は向こうで勧誘してろ!!つーか潰れろ!!!」
輝月
「お主こそ、ここはワシの縄張りじゃと何度も言ったはずじゃ!!失せろ!!」
キュピル
「何で剣道部が二つあるんだよ。」


そう、今俺は高校生活を彩る部活を選択肢に来ている。

ヘル
「そこの新入生!俺の剣道部に入れ!別に他の部活に入っても良いが間違ってもあんな糞野郎の部活にだけは入るな!」
輝月
「お主。あんな力ばかりに頼る野蛮な剣道より華麗な技と見とれるテクニックで相手を負かす剣道に入らぬか?」
キュピル
「同じ剣道部なんだろ?流派が違うみたいだが見た所二つとも人数微妙みたいだから合併すればいいじゃないか・・・。」
ヘル&輝月
「それはできん。」
キュピル
「お前等本当は仲いいだろ。」




・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。


キュピル
「しっかし色んな部活があるなぁ・・・。やっぱり中学と比べると校舎の大きさも違うしスケールも何もかも違うなぁ。」

流石大きな高校なだけはある。改めて俺がこの高校に入れたのは奇跡に思えて仕方がない。
真面目に勉強していないのに直感とその時のインスピレーションで受かったようなものだからな・・・。

キュピル
「野球部、サッカー部、ラグビー部・・・この辺はもはや定番だな。」

今の三つの部活は中学の頃にもあった事は覚えている。・・・ラグビー部は珍しい気もしたのだが・・・。

キュピル
「吹奏楽部、けいおん部・・・。ん、この二つって何が違うんだ?」

さっきの剣道部を思い出す。
この二つの部活は扱う楽器が違う・・・ような記憶が。

キュピル
「えーっと、こっちは・・・・。ガンダム同好会部、アニメ同好会部、ロボット同好会部・・・全部かぶってるぞ。

ガンダムはアニメだ。ロボットもアニメだ。全部アニメ同好会部に合併しろよ・・・。

キュピル
「科学研究部、調理部、帰宅部・・・おい、最後に部活じゃないだろ。」
ファン
「科学研究部に入りませんか?いえ、入ってください。」
キュピル
「うお、突然どこから!?」
ファン
「突然すみません。僕はファンと申します。科学研究部に入りノーベル賞を目指してみませんか?」
キュピル
「質問に答えろよ・・・。っというかノーベル賞目指す部活ってまた偉くスケールがでかいな!?
目指すだけで実績はないんだろ?」
ファン
「実績はちゃんとありますよ。そこの研究室に入って見てください。」
キュピル
「なん・・・だって・・・。」

疑いの眼差しを向けながら研究室に入る。ビーカーやフラスコ瓶が黒い机の上に沢山並んでおり
赤色の液体や青い液体などいかにも科学っぽい物が並んでいる。よくわからないけど。

ファン
「そこを見てください。」

科学研究部員の者が示した先には確かに科学部門のノーベル賞が飾られており、受賞した時の写真や新聞も張られている。
・・・マジのようだ。

キュピル
「・・・すげぇ。」

もしかしてここの高校って世界一頭のいい高校なんじゃないのか?
そう考えるとますます入学出来た事が不思議でしょうがない・・・。

キュピル
「・・・恐れ入りました・・・。・・・でも俺科学とか全然出来ないから無理だよ、そもそも続けられない。」
ファン
「私が1から教えますよ。どうです?入りませんか?」
キュピル
「も、もう少し他の部活を見てから決めるよ。それにもっと優秀な奴とかを探した方が・・・さ・・。
・・・・ところで科学研究部って何人入っているんだ?」
ファン
「じ・・・じつは・・・。・・・僕一人だけ・・・でして・・・。」
キュピル
「一人!?」

ファン
「しかも僕は今三年生で来年になると誰も居なくなってしまうので存続させるためにも今ここで新入生を・・・。」

キュピル
「自信がないのは分るが声が小さい。」

・・・そもそも一人しかいないのによく廃部にならず、しかも卓越した予算と道具を与えられている物だ・・・。
いや、ノーベル賞取るまでは殆ど予算も与えられていなかったのかもしれない。

キュピル
「あー・・・そうだ。一人頭の良い優秀な知り合いがいるので科学研究部の事紹介してみますよ。」
ファン
「本当にお願いします。」
キュピル
「そ、それではまた。」

逃げるような足取りで研究室から出て行く。俺にはここの部活絶対に無理だ。
ここの学校の華とはとても思えないし。

研究室から飛び出し廊下を走って何処か適当に行く。その最中偶然にもルイの背中が見えた。
通りすぎ様に背中を叩き、ルイの目の前で振り返って止まる。

キュピル
「ルイ!科学研究部へ入れ!」
ルイ
「滅!」






キュピル
「お前そんなキャラだったっけか・・・。」
ルイ
「むしろキュピル君のせいで手が出やすくなったんだけど・・・。責任取ってくれない?」
キュピル
「んじゃ責任取って結婚するか。」
ルイ
「けっ、けっ、けっ、結婚っっ・・・!!そ、その・・そ、そう!あくまでも責任を取ってもらうために結婚するから
これは私の意思じゃないというか、えっとえっとえっとあ、別に嫌とかそういうんじゃくぁwせdrftgyふじこlp;」
キュピル
「ハッハッハ!誰が手の出やすいババアと結婚するかって!早く科学研究部にでも入れよ〜!」
ルイ
「・・・・・・キュピルウウっっっっーーーーーー!!!!!」

キュピル
「げぇっ!!何かあいつ超怒ってるぞ!!」
(当たり前




・・・・。


・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


キュピル
「はぁ・・・はぁ・・・。なんとか撒いたか?今日またあいつに会ったら殺されかねないからな・・・。
部活は今週いっぱいまでに決めればいいから今日は帰るか・・。」

一瞬で教室に戻り即座に荷物をまとめその場から退散しようとする。

マキシミン
「おいっ、んなに慌てて何処行くんだ?」
キュピル
「ルイから逃げるんだよ!」
マキシミン
「・・・クックック、聞いてるぜ。お前あのルイちゃんと幼馴染なんだろ?」
ルイ
「見つけた!!キュピル!!!」
キュピル
「げぇっ!!もう来やがった!!おい、マキシミンどけっ!」
マキシミン
「おい、何する気だよ!」

机の上に置いてあるジッパーで閉じていない鞄を手に持ち窓際に置いてあるマキシミンの机の上に乗っかる。
窓を潜りそして三階に位置する教室から外へと飛び出した。

キュピル
「ひゃっはーーー!!」

琶月
「ひぃっ!?人が飛び降りてるーーー!!?」
輝月
「むっ、おぉっ!あの時の新入生か!こやつやるな!」
キュピル
「どけどけっ!避けろ!ぶつかるぞ!!」

キュピルがコンクリートの上に普通に着地しようとした場所に誰かが立っていた。


ルイ
「わわわっ!!自殺!!?」
マキシミン
「とてもそうは見えねーけどな。」


琶月
「わっ!わっ!わっ!ひぃぃぃっー!!」

辛うじてキュピルの着地地点から離れ怪我を追わずに済んだ。
即座にその場から離れ校外へと逃げて行く。

キュピル
「じゃぁなー!!」

ルイ
「・・・全くもぉ・・。人様に迷惑をかけまくるわね・・・。」
マキシミン
「ハッハッハ!あいつおもしれーな!ハハハハッ!」
ファン
「あのー、科学研究部に入りませんか?」




・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






それから数日が経過し金曜日を迎えた。


テルミット
「皆さん、おはようございます。」

担任の先生が教室へと入ってきた。
手には生徒名簿と弓を持っている。

キュピル
「(何で弓ぇ・・・)」
マキシミン
「んごぉぉぉぉ・・・・・がぁぁぁ・・・・。」

大きなイビキをかきながら眠るマキシミンに気付いたテルミットが弓を構え、マキシミンの額に向けて矢を放った。

テルミット
「ジャッジメント・ショット!!」
マキシミン
「んぎええぇぇっ!!」
キュピル
「ぎょぇっ!!?・・・って、何だ。本物の矢じゃなくてハゲ頭を狙う吸盤の矢か
マキシミン
「俺はハゲじゃねーぞ・・・。って、なんだよこれ!?取れねぇっ!!?」

マキシミンが必死に取ろうとするが吸盤はきつく吸いついており取る事が出来ない。

テルミット
「今日一日反省したら私が専用の道具で外してあげます。どうです?起きましたか?」
マキシミン
「目ぇ覚めたよ・・・。」

それを聞いたテルミットは再びニコッと笑みを浮かべ、そして

テルミット
「改めて皆さん。おはようございます。」

爽やかな笑顔で教室にいる生徒皆に挨拶を交わした。
見た目はかなり若いのだが中々ベテラン教師だな・・・。二十歳前後に見えるが実は三十路に近いだとか。・・・本当に若いな。

テルミット
「皆さん、部活は決まりましたか?」
キュピル
「(やべっ・・・まだ決めてねぇっ・・・)」

今日を過ぎると一般的に行われている勧誘は終わってしまう。
学校で浮いた存在になりたくなければ今日までに部活を決めなければならない。

キュピル
「(流石に帰宅部っつーのは俺の評判が下がるかもしれないしなぁ・・・。)」

しかし今日に至るまで様々な部活を見てきたが正直どれも心に響く部活は見つからない。
剣道部はリーダーがキチガイ(最低)だし一般的なスポーツ系はあまり俺の柄っぽくない。
かといってなんとか同好会や調理関係も最初は面白くても後が続く気がしない。

つーか、俺は何の部活に入りたいんだ!?
まずそこからである。

キュピル
「(くそー、俺よ、考えろ!?自由きままに、何やっても許されて女の子に持てる素晴らしい部活はないのか!?)」
ルイ
「・・・キュピル君。また悪い事考えてるでしょ?」
キュピル
「そんなこたぁない・・・。へへへ・・・。」
ルイ
「・・・殴りたい顔・・。」
キュピル
「お、やるか?やんのか!?やれんのか、こらぁ!」

数秒後。テルミットの矢がキュピルの顔に五本張り付き昼を迎えるまでハリセンボウのような顔で授業を受ける事になった。




・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


午前の授業が終わりお待ちかねの昼休みへ入った。
テルミット先生に頭だけ下げ吸盤を取ってもらう。


キュピル
「ルイ、ルイ。」
ルイ
「何?」

吸盤のせいで痕がついた顔をさすりながらルイに話しかける。

キュピル
「ルイもう部活決めたのか?」
ルイ
「当たり前じゃない。・・・・って、キュピル。まさか・・。」
キュピル
「い、いや!俺だってちゃんと決めたしー?」
ルイ
「・・・ふーん・・・。」
キュピル
「怪しいって顔してやがるな・・。ルイは何部なんだ?」
ルイ
「ちょっとキュピル君。何処の部活に入ったか教えてくれるかしら?」
キュピル
「質問を質問で返すな。ルイは何部なんだ?」
ルイ
「先にキュピル君が教えてくれたらいいよ。」

こ、こいつ・・・。
思わずその場を濁して逃げようとしたが勘の良いルイならそれで俺が今何処にも属していないっという事に気付くだろう。こうなったら適当に何か言うか!!

キュピル
「か、科学研究部だよ・・。何か文句あるか?」
ルイ
「へぇ、科学研究部。案外普通n・・・・って、えええぇぇぇ!!?キュピル君が科学研究部!!!?
ヘル
「なんだと!!?」
輝月
「お主!!剣道部に入れと言ったじゃろうが!!」

キュピル
「お前等どこから湧き出た。」

ファン
「皆さん科学研究部入りませんか?」


ヘルと輝月が二人してキュピルの胸倉を掴み揺さぶる。

ヘル
「話しは聞いてるぞ!!お前三階から飛び降りて無傷だったんだってな!!お前のガッツ気に入ったぞ!
頼む!俺の剣道部に入ってくれないか!?お前なら全国大会で優勝できるぞ!!」
輝月
「キュピルよ?お主の素質はこのワシが既に見抜いておる。お主ならば全国大会で優勝出来るぞ。
どうじゃ、私の剣道部に入らぬか?1からワシが教えてしんぜよう。」
キュピル
「(うごごごご・・・こ、このキチガイブラザーズめ・・・)」(注:兄弟じゃありません。

二人の強烈な勧誘に見かねたのかルイが何かつぶやく。

ルイ
「んー・・・。確か部活ってさ。一つしか入っちゃいけないってルール無かった気がするのよねぇ・・・。」
キュピル
「うぇぇっ!?ルイ、てめぇまさか!?」
ヘル
「ん、一般的には部活は二つ以上所属すると練習時間が他より少なくなるから好まれてはいない。
そういう奴は普通ならばリーダーに断られるが・・・お前なら別だ!科学研究部に属しながらも剣道部にも属しないか!?」
キュピル
「ありねぇし!絶対ありえねぇし!!?いや、普通部活は一個だけだろ!!!」

ルイ
「でもインターネットで調べてみたけど部活は一つまでって校則の学校。意外となかったんだよねー。」(マジで調べました。
キュピル
「そ、そんな・・・まさか・・・。」

適当な部活の名前を言ってその場をやり過ごそうと思ったら予想外な出来事に発展してしまった・・・。
このままの勢いでは剣道部に所属することになってしまう!!こんな奴等と剣道はしたくない!(酷い

輝月
「よしっ、失礼と承知してお主を強制的に我が剣道部へ入部させる!詫びならば琶月にいくらでもやらせる。
さっそくワシは顧問の元へ行かせて貰う。それではさらばじゃ。」
ヘル
「あぁ、俺もお前を強制的に入部させる!詫びは今する!ごめん!!んじゃな!」
キュピル
「ごめん!じゃねーよ!!!」



心の底から叫び慌てて輝月とヘルを呼び戻そうとするが二人とも別々の場所へ行ってしまい片方止めても
片方は顧問の元へ辿りついてしまうだろう。

キュピル
「あがががが・・・。・・・幽霊部員になってやるぞぉ・・・・。」
ファン
「キュピルさん、ここにお名前を。」
キュピル
「・・・・ファン・・・突然なんだよ・・。」
ファン
「先程科学研究部に所属していると聞こえたので。決心してくれて非常に嬉しいです。」
キュピル
「い、いやあれは・・・。」
ルイ
「ふーん。」
キュピル
「げぇっ・・・。」

ルイがニヤニヤしながらキュピルとファンのやり取りを見ている。
あの表情を見るからにどうやらキュピルが科学研究部と適当に言った事を既に見抜いているようだ。

ルイ
「ファンさん、この人馬鹿で不真面目でよく嘘つきますが床磨きくらいなら出来るので扱き使ってあげてください。」
キュピル
「いや、だから俺は科学研究部じゃないっ・・・!?」
ルイ
「何?床磨き何か言った?」

キュピル
「もうだめだ・・・・。抵抗したら酷い目にあう・・・。」





・・・・かくして、俺は不運な事にも科学研究部と剣道部と剣道部。三つの部活に入部することになってしまった・・・。
何だよ・・・剣道部と剣道部って・・・。ありえねーよ・・・。
あぁ・・・俺の自由きままで女の子にモテモテな高校ライフが・・・。





・・・。




・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






ルイ
「キューピルくーん。部屋に籠ってないでお外に出ておいで〜。」
キュピル
「おいやめろ。俺がまるで引きこもりみたいじゃないか!!」

急いで制服に着替え自宅から飛び出る。

ルイ
「おはよう、キュピル君。」
キュピル
「全く・・・毎朝毎朝でたらめな事言いやがって・・・。」
ルイ
「そんな事言って・・・。私が毎日迎えに来てあげているんだからむしろ感謝して欲しいくらいよ?
迎えに来てなかったら寝坊してるでしょ、キュピル君。」
キュピル
「あぁ、そうだな。今日は平和だ、寝ようってなってるな。」
ルイ
「滅!!」









キュピル
「ごめんなさい。」
ルイ
「ところでもう六月の半ばよ。もうすぐ期末試験だけど対策はできてる?」
キュピル
「対策なら俺の隣に。」
ルイ
「滅!!」







キュピル
「ごめんなさい、もうカンニングしません。」

凹んだ顔面を元に戻そうと鼻を引っ張り続けるキュピル


ルイ
「ってか、この前の中間試験で私の答案用紙カンニングしたのばれてテルミット先生に矢を100本打たれたばっかりじゃない・・・。
ちゃんと真面目に更生して勉強してよ。」
キュピル
「それはできん。」
ルイ
「滅・・・」
キュピル
「おーっと、三度もマジンガーパンチ喰らうもんかって!!」

キュピルがルイのパンチをしゃがんで避け、すぐに立ち上がるとルイの髪飾りを一つ奪って逃走する。

ルイ
「あ、こらああーーー!!!」





・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ファン
「化学反応を実際に目で見て確かめてみましょう。」

ファンがマッチ棒を取り出しアルコールランプに火をつける。

ファン
「はい、化学反応です。」
キュピル
「・・・え?今の何処に化学反応があったんだ?」
ファン
「燃焼も立派な化学反応の一つ何ですよ。」
キュピル
「うっわ、科学って地味くせぇ・・・・。」

キュピルが息を勢いよく吐きアルコールランプについた火を消す。

ファン
「ヒェェェ!!駄目です!!アルコールランプの火を消す時はこのキャップで閉めて酸素を・・・」
キュピル
「分ってる分ってる。」
ファン
「本当ですか?」
キュピル
「なぁ、化学反応ってようは物質が変化するって事なんだろ?」
ファン
「平たく言えばそうなります。」
キュピル
「んじゃさ、この1円玉を化学変化させて100円玉とかにしてくれよ。」
ファン
「意味を履き違えていませんか?」



授業を終える度に研究室に足を運び知りたくもない科学の話しを聞かされる。
あぁ・・・苦行だ・・・・。いっそ帰宅部でよかったか・・・。
というか未だに俺は何の部活に入りたかったんだ・・・。

ファン
「化学反応はノーベル賞を獲得するに当たって絶対に避けては通れない分野ですからきっちりおさらいしますよ。」
キュピル
「(おいおい、これじゃ科学の授業と全く変わらないじゃないか!というか俺も取る前提かよ!)」

キュピルがいよいよもって、だらけようとしたその時。廊下からドタバタと走ってくる音が聞こえた。あぁ、またあいつか。

輝月
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。キュピルよ!剣道の時間じゃ!」

輝月が既に剣道の防具を身に着け右手には竹刀を持っている。傍から見れば危ない人間だ。

ファン
「輝月さん。まだ科学の時間が始まってから十分しか経過していません。時刻で言えば四時四十分。
約束では五時まで科学をやったら剣道という約束のはずでしたが。」
キュピル
「俺は習い事やらされている子供か。」

輝月
「もう待てぬ・・・我慢できん!キュピル、早くっ・・!!」

キュピル
「うぅ〜む。中々妄想かき立てられる台詞だ。へっへっへっ・・・。」

ルイ
「滅!!!」

キュピル
「うぎゃぁっ!!」


後頭部を思いっきり殴られ地面の上にぶっ倒れる。すぐに起き上がり後ろを確認するが誰も居ない。

キュピル
「っ?っ?今ルイ居たよな?絶対居たよな!?」
ファン
「さぁ・・・僕は見てませんけれど。」
輝月
「気のせいじゃろう?」
キュピル
「いや、絶対気のせいじゃない!」
輝月
「ぬぅっ、邪念を持っておるからそのような事になるのだ。ワシと剣道を早くやって心身鍛えるぞ。」
ファン
「ですから輝月さん!まだ約束の時間ではありません!」


バタバタバタバタ


ヘル
「おい!キュピル!俺と剣道やるぜ!!」
輝月
「ぬっ!!貴様!キュピルはワシと五時半まで剣道やってからと決めたではないか!!ちゃんと時計を見んか!
キュピル
「お前も時計見ろ。」


部員が俺とファンしかいない科学研究部はともかくとして、剣道部やっているお前等は普通に部員も抱えている訳だから
俺ばかりに執着しないでちゃんと普通の部員も見てやれよ。っつか俺には二度と構うな。

輝月
「貴様は五時半まで正座して待つが良い!」
ヘル
「もう待てん・・・我慢できん!キュピル、早くっ・・!!」

キュピル
「滅!!!」



はぁ・・・俺は一体何をやっているんだか・・。
地面の上で悶え苦しんでいるヘルを余所に別の話しを切りだす。

キュピル
「つーか・・。もうすぐ期末試験だがお前等は大丈夫なのか?」

本当は自分が一番ヤバイって事は知っているがあたかも大丈夫そうかのように言う。

ファン
「僕は大丈夫ですよ。」
輝月
「ふっ、武人は戦いの知恵さえ持っておればよい。」
ヘル
「あぁ、そうだ。」
キュピル
「あぁ、仲間だ。仲間がいる。剣道部に入っててよかった・・・。」

ルイ
「勉強しなさいよ。」
輝月&ヘル&キュピル
「それはできん。」
キュピル
「って、ルイ!!!・・・・あれ?居ない?こんどこそルイ居たよな!!?」
輝月
「気のせいじゃろう。邪気が回っておる、早く科学研究室など抜けだし我が道場で瞑想するのじゃ!」
ヘル
「科学研究室を抜け出すのは同意するが最後のはよくねぇ、それじゃ妬きが回るぞ!」
キュピル
「何に妬くんだよ。」

ファン
「あのー、科学続けていいですか?」




この先どうなるのやら・・・・。







・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





七月。

気温は高くなり30℃を超える日も出始める。今年は猛暑となるだろう。
入学を果たしてから三カ月が経過したが特別生活が変わったという訳では・・・・?

ルイ
「キュピルくーん!ほら!出てこないと遅刻するよ!引きこもりのキュピルk・・・」

いつも通りルイがキュピルの家の前で叫び声をあげていた、がその時。

キュピル
「うわああぁぁぁっっっーーーー!!」
ルイ
「わっ!!急に何!!?」


突然キュピルが泣きながらルイに飛びつきそのままルイの前で跪いた。

キュピル
「頼むぅぅぅっーー!!俺に勉強を教えてくれぇぇぇっっーーー!!!」

ルイ
「ちょ、ちょっと・・・。そもそもこの前期末試験終えたばっかりじゃん・・。って、キュピル君まさか・・・。」

キュピルが鞄からテストの結果を取り出しルイに見せる。

ルイ
「え、えーっと・・・。7点、3点、12点、0点、1点・・・うわ、何これ・・・酷いってもんじゃないわよ・・・これ・・・。
どうするのこれ・・・。再試験でまた同じような点数取ったら退学じゃん・・・。」

キュピルが必死に頷きルイの目の前で土下座する。

キュピル
「ルイ様、この不出来な私目に1から勉強を教えてください!」
ルイ
「・・・・しょうがないわね・・・全くもう・・・。ほら、顔をあげなさい。」
キュピル
「本当に?」

キュピルがルイの足元で顔を上げる。

キュピル
「・・・縞々。」
ルイ
「・・・・・・・・・。」








テルミット
「おはようございます・・・って、キュピルさん!酷い怪我ですが事故でも起こしたのですか!?」
キュピル
「はい、人的事故を起こしました。」

テルミット
「はぁ・・・?出席しているのは分ったので早く保健室に行ってください。」

キュピルが壁によりかかりながらゆっくりと移動し保健室へと向かう。

マキシミン
「何であいつボロボロなんだよ・・・。」
ルイ
「ふんっ!!」
マキシミン
「しかも何かルイ怒ってるし・・・・。」
キュピル
「(俺は絶対に悪くねぇ・・・あいつが顔を上げてって言ったから俺は言う通りにしただけだ・・・。)」





・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。





ルイ
「二次関数、しっかりとおさらいしてあげるからノート取って覚えなさいよ。」
キュピル
「イエス、マスター!」
ルイ
「・・・まずは二次関数の公式をしっかり覚えて。二次関数ってのは0でない定数aと、定数b,cを用いて
y=ax2+bx+cと表される関数yを・・・。」
キュピル
「zzzz・・・・zzzz・・・・。」
ルイ
「滅!!」




キュピル
「イエス、マスター!このような難解な式をいきなり言われても覚えられる訳がアッリマッセーン!」
ルイ
「真面目にやらないなら帰るよ?」
キュピル
「すみません!!!私に二次関数を教えてください!!お願いします!!!!!!」
ルイ
「・・・・。」







ルイ
「つまりここのax2+bx+c=0が解を持つ時はこんな風に因数分解形で表す事が出来るの。」
キュピル
「先生、因数分解とは何ですか!」
ルイ
「えっ!!中学でやったじゃない!そもそも入試にも出たはずよ!?それに数学は鉛筆ころがしじゃどうにも出来ない分野・・。まさか・・!」
キュピル
「HAHAHAHAHA。カンニn」
ルイ
「滅!!」





ファン
「キュピルさん、科学の時間が・・・おや・・・。ルイさん、こんにちは。」
ルイ
「あ、ファンさん。こんにちは。」
ファン
「・・・キュピルさんの頭が凹んでいるように見えますが何かあったのですか?」
キュピル
「オオアリ。」
ファン
「オオアリ?蟻?」
キュピル
「がくっ・・・。」
ルイ
「ファンさん・・・キュピル君に勉強を教えてあげてください・・・。キュピル君このままだと赤点で退学に・・・。」
ヘル
「なにっ!それは困るぞ!キュピル!俺と勉強だ!!」
輝月
「お主が退学されては我が楽しみが減る!ワシと共に徹底勉強じゃ!!」

突如ヘルが窓から、輝月は掃除用具入れから現れキュピルを囲む。

キュピル
「もう突っ込まねーしお前等まとめて帰れよ・・・。ってかお前等赤点取らなかったのかよ・・・。

ってか、皆何点だったんだ・・・?」
ルイ
「あれ?職員室の前に張り出されているの見ていない?」
キュピル
「なにっ!張り出されているだとぉぉっ!?」
ルイ
「あ、キュピル君!今見るんじゃなくて後で見に・・・って、もういない・・・。」


・・・・。

・・・・・・・・・・。

キュピル
「輝月とヘルの点数は何点だ!えーっと、輝月は・・・42,45,48,42,46・・。なんだよ、この超中途半端な成績は・・・。
でも赤点じゃない・・・。ヘルは・・・15,14,12,1,9・・おい、こいつ赤点だぞ。
でも俺よりはマシかよ・・・。・・・ん、俺より下な成績の奴がいるぞ。」

マキシミン:0 0 0 0 0

キュピル
「ぷっーくすくすwwww」

マキシミン

「おぼぇぁぁっーー!!」
キュピル
「うわっ!!吐きながらこっち来るな!!!」






・・・・。



・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




テルミット
「皆さん、おはようございます。今日も一日しっかりと勉強に励んでください。
なお、前回の期末試験で赤点を取った者は今日追試があります。二回目の追試でも赤点を取ってしまった方は
退学の可能性も出てくるので気をつけてください。それではこれでホームルームを終えます。」


ルイ
「キュピル君?大丈夫?今日追試だよ?」
キュピル
「あわわわ・・・・x・・・y・・・Hello・・・ぉぅぃぇぁ・・・。化学反応・・・」
ルイ
「(うーん・・・今期でキュピル君とはお別れかも・・・。そうなる前に・・・。)」



・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。


テルミット
「それでは追試を始めます。始め!」


キュピル
「(くぅ、まずは数学・・・。くそ・・・追試は非常に不利だ・・・。ここに居る人間は皆勉強の出来ない奴等・・・!
つまり隣を覗き見てカンニングしてもそいつも間違っている可能性が大ぃ・・・!!
だが・・・ここで何としてでもクリアしねぇと・・・!)」


・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。


テルミット
「時間です。止めてください。」
キュピル
「(これなら・・・行けるか・・・?)」
テルミット
「次は現代文です。」
キュピル
「(これも今日のためだけにしっかりと頑張ったからな・・・。くそっ・・・やってやる・・・!!)」







・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。










テルミット
「時間です。鉛筆を置いてください。」
キュピル
「(お、終わったぁ・・・。五科目全部・・・・)」
テルミット
「答案用紙を教卓の上に置いたら流れ解散してください。」

一番乗りで教卓の上に解答用紙を置き即座に教室から飛び出る。
日は沈みかけており空は夕焼け色。暑い気温も徐々に下がり始めてきた。
西へ顔を向ければそこはもう深い蒼色。夜が広がっている。

正門を出ると誰かに呼びとめられた。

ルイ
「お疲れ様、キュピル君。」
キュピル
「お、ルイ。こんな所で何してたんだ?」
ルイ
「結果を知るために待っててあげてたの。それで手ごたえは!?」

何も言わずにグッとガッツポーズを取る。それを見てルイも安心したような笑みを浮かべる。

ルイ
「うん、よかった。・・・でも本人が出来たと思った時って大抵駄目なんだよね・・・。」
キュピル
「ナニィィ・・・。」
ルイ
「あーあー、心配〜。」

ルイがゆっくりと帰路へと向かう。
キュピルも右手で自分の頭をクシャクシャにしながらルイの後を追う。
日はもう沈み星空が見え始めていた。

ルイ
「(・・・うん、これだったら今日実行しなくてもよさそうね。)」







そして翌日。キュピルは36,36,36,36,36という有り得ない点数配列を叩きだし、全て一点差で赤点を回避した。




続く


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